Myb遺伝子ファミリーのメンバーの一つであるB-Mybの複合体を精製し、クラスリンとフィラミンを含むことを見出した。この複合体がクラスリンを紡錘体に運搬し、紡錘体形成を介して、細胞分裂を制御することを明らかにした。この複合体の機能を阻害すると、多倍体形成や染色体異常が誘導され、B-Mybは、がん抑制因子としても機能することが明らかとなった。 一方、c-Mybの過剰発現は、ヒト急性リンパ性白血病を引き起こし、c-Myb分解の異常は、c-Mybレベルの上昇と白血病を引き起こす可能性がある。しかしこれまで、c-Myb分解のメカニズムは良く分かっていなかった。私達は以前に、Wnt刺激によって、キナーゼNLKが直接c-Mybをリン酸化し、c-Mybのユビキチン化とプロテアソーム依存的な分解を誘導することを報告した。今年度は、このWnt依存的なc-Myb分解に、Fボックスタンパク質Fbxw7が関与する事を明らかにした。これにより、Fbxw7の変異による発がんには、c-Mybの安定化も関与することが示唆された。 また、転写コリプレッサーとして機能するSki/Snoは、TGF-βシグナル伝達経路を阻害し、発がん因子として機能するが、一方で、Madなどの転写リプレッサー機能に必須で、がん抑制因子としても機能する。Skiの作用メカニズムを理解するため、Ski複合体を精製し、ヒストンデアセチテーゼ、ヒストンメチル化酵素と共に、キナーゼやユビキチンE3リガーゼなどの多様な因子を含むことを見出した。これらの構成因子が、Smadの標的遺伝子の転写制御に関与することを明らかにした。
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