Epstein-Barrウイルス(EBV)の溶解感染を誘導した宿主細胞では、ATM依存的DNA損傷応答シグナルが活性化され、その結果p53は活性型に変換されるが、このシグナルはp53の下流には伝達されない。我々は、BZLF1蛋白質は溶解感染時にp53をproteasome依存的に分解し、下流の遺伝子発現を抑制するということを明らかにした。本研究では、BZLF1蛋白質によるp53のユビキチン依存的分解メカニズムについて解析を行い、BZLF1蛋白質のN末にCul-boxモチーフを見いだし、ECS (ElonginB/C-Cu12/5-SOCS) ubiquitin E3 ligase complexの構成因子として知られているCu12及びCu15と結合することを強制発現系と感染細胞で確認した。また、RNAiによりCu12及びCu15をノックダウンすると、溶解感染細胞においてp53の発現量が増加した。各蛋白質を精製し、試験管内ユビキチン化反応を行うと、p53はBZLF1-Cu12/5複合体によりユビキチン化され、p53と結合できないBZLF1蛋白質の変異体を用いるとユビキチン化は減少した。さらに、p53は宿主DNA損傷応答シグナルの活性化によりリン酸化され、そのリン酸化がBZLF1蛋白質との結合を強めることが解った。一方、潜伏感染状態のp53は不活性型であるが、それはMDM2ユビキチンリガーゼの制御を受ける。以上より、溶解感染時にBZLF1蛋白質はCu12/5複合体をリクルートし、p53のアダプターとして働くことにより、p53をユビキチン化し分解へと導くことが示唆された。
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