研究概要 |
基底膜タンパク遺伝子変異により発症する表皮水疱症は若年時から高率に皮膚癌を発症する。我々は世界で初めて表皮基底膜欠損マウスを作成し、さらにヒト表皮基底膜のみを発現する表皮基底膜特異的ヒト化マウスの作成に成功した。(Nishie W et al, Nat Med, 2007)さらに世界で初めて皮膚基底膜に通常のマウスVII型コラーゲンを発現せず、変異ヒトVII型コラーゲンのみを発現するトランスジェニックマウス(ヒト化表皮水疱症モデルマウス)の作成に成功している。このマウスはヒト化した完全な表皮水疱症モデルマウスである。本研究の目的は,このヒト化表皮水疱症モデルマウスを用いて、皮膚基底膜接着分子の遺伝的異常が皮膚癌の浸潤、転移能に与える影響について検討することである。本年度の研究においては、変異ヒトVII型コラーゲントランスジェニックマウスを用いて癌細胞の浸潤および走化性の解析を行った。当教室で作成した変異ヒトVII型コラーゲンのみを皮膚基底膜に発現するトランスジェニックマウスの皮膚にDMBA、TPAを塗布し皮膚癌を誘発し、浸潤、転移の動態を臨床的、組織学的にコントロールマウスと比較した。現在、正常マウスにおける化学発癌と比較し、変異ヒトVII型コラーゲントランスジェニックマウスにおける化学発癌の特徴を検討した。現在までの結果ではがん発生について有意な違いはでていない。
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