研究課題
リゾホスファチジン酸(LPA)は、in vitroで細胞増殖、細胞運動性の亢進など多彩な機能を発揮するユニークな生理活性脂質である。LPAの作用は、G蛋白質共役型受容体を介することが知られており、近年、LPA受容体ノックアウトマウスを用いた解析から、LPAが脳神経系の発達や生殖系の発育に必須であることが明らかになってきた。LPAは血清中に多く含まれていることが知られているが、本研究者はこれまで血清中のLPA産生経路を解析し、血清中の主要なLPA産生酵素リゾホスホリパーゼD(lysoPLD)の同定を行った。lysoPLDは癌細胞運動性促進因子であるautotaxinと同一であった。また、国内外の研究者の解析により、autotaxinが様々な悪性腫瘍に高発現していることが多数報告されている。このことからautotaxin/LPAはがんの進行や、転移・浸潤に関与が提唱されている。昨年度、autotaxin/lysoPLDノックアウト(KO)マウスの解析を行い、KOマウスが胚致死であること、autotaxin/lysoPLDヘテロマウスはlysoPLD活性やLPAレベルが野生型の半分になるにもかかわらずほとんど表現型を示さないことを明らかにした。今年度は、昨年度作製したは、autotaxin/lysoPLDの機能を阻害するモノクローナル抗体の単離を試みた。本抗体を個体に投与し、colon26細胞の肺転移性を検討した。その結果、本抗体はcolon26細胞の肺転移性を顕著に抑制した。
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