研究課題
これまでのノックアウトマウスを用いた解析により、オートタキシンは発生段階の血管形成過程に重要な役割を有することが明らかになっている。しかしながらその詳細な作用機構は明らかでなかった。我々はオートタキシンの血管形成における役割を明らかにするツールとして、代表的な魚類のモデル生物であるゼブラフィッシュに着目した。ゼブラフィッシュは閉鎖血管系を有しており、これまでにVEGFや、VE-cadherinがその血管形成過程に関与することが明らかにされるなど、分子レベルでも哺乳類の血管形成過程が類似していることが示されている。我々は、オートタキシンが、ゼブラフィッシュにも高度に保存されていること、および、in vitroで発現させたとき、リゾホスファチジン酸産生活性(リゾホスホリパーゼD活性)を示すことを確認した。また、LPAに対する受容体も高度に保存されており、in vitroのアッセイにおいてリゾボスファチジン酸に対する応答を示すことを確認している。これらの結果は、ゼブラフィッシュ内においてもオートタキシン-リゾホスファチジン酸シグナリング経路が実際に機能していることを示唆する。そこでオートタキシンに対するアンチセンスオリゴ(MO)を投与することでオートタキシンの機能抑制を行ったところ、ゼブラフィッシュにおいても顕著な血管形成異常が観察された。今後は各LPA受容体、並びにオートタキシンの基質産生酵素候補遺伝子に関して、血管形成異常を指標として機能的関連性を明らかにし、オートタキシンの血管形成過程における役割を分子レベルで明らかにする。
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