研究課題/領域番号 |
20013006
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
佐々木 雄彦 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50333365)
|
研究分担者 |
佐々木 純子 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (30333371)
高須賀 俊輔 秋田大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (90375262)
|
キーワード | リン脂質 / イノシトールリン脂質 / 前立腺 / 発癌 |
研究概要 |
イノシトールリン脂質は、多様な蛋白質の活性や細胞内局在を調節することで、増殖、アポトーシス、細胞運動などを制御する。これら細胞応答の異常は、無限に増殖し、浸潤・転移に至る癌細胞の特性の発現へと繋がるものと考えられる。ホスファチジルイノシトール3リン酸はオートファジー、栄養シグナル伝達、小胞輸送等への関与が示唆されるPIs分子種であるが、癌の発生や悪性化におけるこの脂質の役割は不明である。本研究では、ホスファチジルイノシトール3リン酸生成酵素であるクラスIII PI3K (PIK3aC3)が細胞の増殖・生存の制御において果す役割を紐解くとともに、発癌と浸潤・転移におけるPIK3aC3の寄与をマウス個体レベルの解析から明らかにする。癌抑制遺伝子であるPTENの欠損による前立腺がんの発症は、PIK3aC3の遺伝子欠損により抑制された。PIK3aC3のプロダクトであるホスファチジルイノシトール3リン酸が、PTENの欠損によって細胞内に蓄積するか否かを検討した。PTEN遺伝子を欠損するマウス胚性線維芽細胞(MEF)を[3H]イノシトールでメタボリックラベルし、脂質を抽出後にHPLCで解析したが、ホスファチジルイノシトール3リン酸レベルの顕著な変化は確認されていない。一方PIK3aC3遺伝子欠損MEFではそのレベルは低下していた。これらの結果は、少なくともMEFにおいては、PIK3aC3がPTENと脂質産物レベルで拮抗的に働くことはないことを示している。今後、前立腺上皮細胞内のホスファチジルイノシトール3リン酸動態を生体レベルで解析するなどして、PIK3aC3欠損による癌抑制のメカニズムを解明したい。
|