研究課題
癌の進展には、増殖の促進因子と増殖の抑止因子の両面から、悪性化とまだ同時に転移などにおける細胞の機能制御の破綻が問題となる。悪性黒色腫は骨への高い転移能を示すことから、本年度の研究においては癌の増殖に関わる遺伝子群の骨形成に関わる役割についての検討を行った。癌関連遺伝子JunDはその存在が消化管の癌の促進因子であることが知られ、また癌の転移における機能が推察されているが、増殖に関わるこの分子の存在は、一方で分化の抑制に関わることが推察された。JunDを欠失したマウスにおいては骨芽細胞の機能が促進し、このことが増殖の低下とリンクする分化の促進であることが推察された。この作用は、間葉系の細胞由来である破骨芽細胞において増殖の低下と分化の促進として観察されるが一方で、血液由来の細胞である破骨細胞についてはJunDの欠失は全く影響を及ぼさなかった。以上のことから、間葉系細胞の増殖を促進して分化の抑制の鍵となる分子としてJunDの存在が推察された。即ちJunDについて、悪性黒色腫の接着と骨における転移について骨芽細胞の役割の観点から検討する基盤が得られた。更に、anti-proliferative geneのANAについても、その欠失により動物において癌の発生率が増加することから、この分子の欠失の際の分化に対する影響を検討した。ANAの欠失は、骨芽細胞の分化の促進因子であるBMPの活性を高め、また一方でANAの強制発現は、アルカリフォスファターゼを指標としてみたBMPの骨芽細胞の分化に対する働きを抑制したことから、この分子が内因性のBMPに対し抑制的な機能を持つことが推察された。骨への悪性黒色腫の転移においては、局所の微小環境における骨芽細胞の持つ分化の機能の一つとしての成長因子の蓄積が、癌細胞の転移先における増殖を推進させることが考えられている。実際、ANAの欠失マウスにおいては異所性骨化の促進が見られ、このことはANAが局所における骨の形成の抑止に働いており、増殖の抑制と共に癌の転移先としての骨の細胞増殖因子をフィーダーとする癌細胞に対する制御としての支持機能においても、この分子が抑制的な機能を持つことを示唆したものである。
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