アポトーシスと呼ばれる細胞死誘導シグナルの実体が明らかとなり、細胞死の研究が新しい局面に入った状況をふまえ、我々は、アポトーシスとは異なる新しい細胞死の分子機構と生理機能を解明する研究を開始している。そして、新規細胞死はeEF1A1の発現抑制によって誘導されるが、eEF1A1の発現抑制がmRNAの安定性低下と翻訳抑制の二つの原因によることを明らかにした。また、その翻訳抑制には5'-TOP構造を有するeEF1A1 mRNAが必要であることを明らかにししてきたが、この5'-Top構造のほぼ全ての領域(約80bp)が細胞死の誘導(eEF1A1の発現抑制)に必要であることを明らかにした。また、外来性eEF1A1を強発現するトランスジェニックマウスき作製するため、CAGプロモーターの支配下にeEF1A1を発現するコンストラクトを、全ての組織で発現することが保障されているRosa26ローカスにノックインしたES細胞を作製した。現在、このES細胞からマウスを作製している。 さらに、p53の発現しない細胞にX線や紫外線を照射したり、etoposidoの処理を実施すると、異常なM期に陥り、M期を脱出し多核の異常の細胞が、caspaseの活性化に依存したアポトーシスではなく、eEF1A1 (EF-1α)の発現抑制にも依存しない、全く新しい細胞死によって除去されることを見いだした。そして、この新規細胞が誘導される分子機構を明らかにするために、現在解析を行っている。
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