研究概要 |
Ralは、エフェクターは未だ同定されていないが、細胞増殖・癌化を制御する。Ralの抑制性活性制御因子であるRal-GAPは未同定であり、Rasファミリーの中では同定されるべき最後のGAPであったが、我々は、Ral-GAPの同定に成功した。Ral GAPは、活性を持つαサブユニットとβサブユニットのヘテロダイマーであり、哺乳類では活性サブユニットは2分子(α1およびα2)が存在していた。我々はRalGAP-1(α1β)とRalGAP-2(α2β)と名付けた(投稿中)。さらに、それぞれのサブユニットの遺伝子KOマウスを作成した。α2サブユニット遺伝子M変マウスは、正常発生を示したが、高発現する肺等では、Ralの活性は数倍上昇していた。膀胱ではα1サブユニットの発現は低く、ほとんどがα2サブユニットである。非浸潤性膀胱癌細胞株では、α2サブユニットの高い発現を認めたが、浸潤性を呈する癌細胞株ではα2サブユニットの発現量は低下していた。 RalGAPの膀胱癌浸潤性への関与が考慮される。現在、ヒト癌組織における活性型Ras、活性化Ralの定量およびRalGAP発現量の定量を行っている。また、Ralは、Rasの穎粒に位置しており、Ras依存性の化学発がんモデルにおいて、Ralの関与を解析した。すなわち、Ras依存性とされる膀胱癌を化学物質によりα2サブユニット遺伝子改変マウスに誘導したが、正常型に比べ、α2サブユニット遺伝子改変マウスに生じた膀胱癌は高い悪性度を持ち浸潤性を示した(投稿準備中)。癌浸潤に対するRalおよびRalGAPの重要性が示唆された。また、癌浸潤では、アクチン細胞骨格系の再構成が重要であるが、直鎖状アクチン伸長因子であるmDialとDaamlがRhoの制御を受けることを無細胞系で証明し(JBC, 2009)た。さらに、mDialおよびDamml結合蛋白質として、ゲルゾリンファミリーに属するFlightless-Iを同定し、RhoとFlightless-Iが協調してmDialおよびDammlを活性化し、直鎖状アクチンを精製することを証明した。
|