研究概要 |
リンパ節におけるリンパ管新生の臨床的意義を検討するために、乳房外Paget病116例に関して病理組織学的検討を行った。(方法)蛍光二重染色法に従い、血管及びリンパ管に対する特異的抗体を用いて組織学的に検討した。この結果、乳房外Paget病では上皮内癌72例で、既に血管及びリンパ管新生が強力に誘導されていた。次に、本疾患における予後因子を見出すべく、腫瘍細胞の特性を評価した。この結果、浸潤癌で上皮-間葉転換のマーカーであるN-cadherin, vimentin, 細胞内E-cadherinが発現していた。さらに、上皮-間葉転換を来している症例は、原発巣におけるリンパ管浸潤、所属リンパ節転移を来たし、予後不良であった。以上、上皮-間葉転換は乳房外Paget病の新規予後不良因子であることが示唆された。さらに、転移を来した所属リンパ節では、転移以前のリンパ節に比べて明らかにリンパ管新生が誘導されており(P=0.022)、リンパ管内に腫瘍細胞が浸潤していた。そして、所属リンパ節におけるリンパ管浸潤は、所属リンパ節転移を越える遠隔リンパ節転移(P=0.047)及び遠隔臓器転移(P=0.003)と有意に相関し、患者予後の新たな予後不良因子として同定された。さらに、転移所属リンパ節においてもリンパ管新生が誘導され、リンパ管内に腫瘍細胞が浸潤していることが同定された。この事実は、リンパ管新生が所属リンパ節転移を越えるリンパ行性転移を促し、リンパ管新生が遠隔転移を促進する結果、患者予後に重大な結果をもたらすことを裏付ける。
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