研究概要 |
乳房外Paget病は、高齢アジア人に生じやすい皮膚悪性腫瘍である。浸潤癌はリンパ行性転移を来しやすく、予後は不良である。従って、乳房外Paget病の浸潤・転移機構を解明し、治療の基盤を創出することは極めて重要である。本研究課題は、106例の乳房外Paget病を検討し、浸潤・転移に関わる病態解明に取り組んだ。(1)血管・リンパ管新生:乳房外Paget病の原発巣では、血管及びリンパ管新生が亢進していた。この生物像は上皮内癌で認められ、浸潤癌でも同程度であった。上皮内癌でも、癌間質には転移に関わるリスクが存在することが示唆された。(2)上皮-間葉転換:浸潤癌42例について検討を行った。リンパ節転移を来し予後不良であった症例では、Paget細胞はE-cadherinを細胞膜表面に欠き、N-cadherin及びvimentinが発現していた。即ち、予後不良群は上皮-間葉転換を来していることが示唆された。(3)リンパ管浸潤:上皮-間葉転換を来した症例では、原発巣でリンパ管浸潤を高率に認めた。従って、リンパ管浸潤は、リンパ管新生に加えて上皮-間葉転換が密接に関与し、リンパ節転移を来すことが示唆された。(4)リンパ節におけるリンパ管新生:所属リンパ節転移を来した症例では、リンパ節におけるリンパ管新生が亢進していた。この度合いは、N-gradeと正の相関が見られた(P=0.02)。さらに、リンパ節におけるリンパ管浸潤は、遠隔リンパ節転移及び遠隔臓器転移と相関していた(P=0.047,P<0.001)。従って、リンパ節におけるリンパ管新生は、乳房外Paget病の転移機構を理解する上で重要な因子であることが示唆された。
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