(1)癌細胞の血行性転移におけるロイコトリエンB4受容体の機能:血行性転移の実験に汎用されるLLC (Lewis Lung Carcinoma)細胞に細胞マーカーとしてEGFP (Enhanced Green Fluoroscent Protein)を安定発現するLLC-GFP細胞を樹立した。この細胞をBLT1、BLT2欠損マウスの尾静脈より投与し、フローサイトメーター法、ウェスタンブロッティング法を用いて、肺への転移を検討したところ、BLT1欠損マウスにおいて有意に肺転移巣の増大を認めた。BLT2欠損マウスにおいても肺転移の増大傾向を認めたが、BLT1欠損マウスと比較するとその程度は小さかった。また、LLC細胞静脈注射後の生存率を検討したところ、BLT1欠損マウスは野生型マウスよりも生存期間が有意に短縮していた。BLT1欠損マウスBLT1はCD8陽性の細胞障害性T細胞、ナチュラルキラー細胞に発現しているため、BLT1欠損マウスではこれらの癌細胞障害性のリンパ球の転移巣への移動が減弱した結果、LLC細胞の肺転移を抑制できなくなっており、そのため生存期間が短縮したことが推定された。
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