研究概要 |
MUTYHは主要な酸化塩基である8-oxoguanine (8-oxoG)に誤対合するアデニンを除去するDNA修復酵素であり、MUTYH遺伝子の欠損は常染色体劣性遺伝性の大腸腺腫症の原因となることが報告されている。我々は、核あるいはミトコンドリアDNAに蓄積した8-oxoGがMUTYHに依存して2つの独立した細胞死の経路を誘導することを明らかにした。MUTYHが8-oxoGに対合したアデニンを切り出し、結果として核あるいはミトコンドリアDNA中に生じた一本鎖切断の蓄積により細胞死が誘起される。MUTYHは細胞死を引き起こすことにより発がんを抑制すると考えられる。平成20年度に我々はMUTYHの発現がp53により制御されることを見いだしたが,平成21年度は,p53によるMUTYH遺伝子発現の制御機構の解明を進め,p53がMUTYHのプロモーター上に存在するp53結合配列を介してMUTYHの転写を正に制御することを明らかにした。また,MLH1あるいはMSH2を欠損するヒト癌細胞株がそれぞれDNA polymeraseβとDNA polymeraseγのノックダウンによりプログラム細胞死に陥ることを見出し,そのメカニズムの解明を進め,以下の知見を報告した。MLH1/pol β欠損下では核DNA中に8-oxoguanineが蓄積し,MUTYH依存性の細胞死に陥る。一方,MSH2/pol γ欠損下では,ミトコンドリアDNA中に8-oxoguanineが蓄積し,MUTYHに依存した細胞死に陥る。
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