研究課題
翻訳終結因子eRF3/GSPT1のN末端にはGGCトリプレットリピートによってコードされるポリグリシンが存在し、健常人においてはこの繰り返しが10前後であるのに対し、12以上になると胃癌発症の危険率が20以上に増大する。また一方で、eRF3/GSPT1は各種ストレスによってN末端が特異的に切断され、その際露出したN末端配列がカスパーゼ阻害因子IAPと特異的に結合してカスパーゼを活性化し、アポトーシスを誘導する。従って、eRF3/GSPT1のN末端領域におけるトリプレットリピートの増大は、ストレスによるN末端の切断を阻害し、アポトーシスの誘導を阻害することにより胃癌の発症率増大を引き起こしている可能性が高い。本研究においては、このような仮説を含め、eRF3/GSPTのトリプレットリピート増幅が胃癌の発症率増大を引き起こす分子メカにズムを解明することを目的として解析を行なった。(1)eRF3/GSPT1のトリプレットリピートアイソフォームの作製グリシンをコードするGGCトリプレットリピートが、それぞれ0、5、10、12であるアイソフォームをPCR法を用いて作製し、細胞にトランスフェクトして細胞染色による細胞内局在性について検討した。各種アイソフォームはどれも細胞質において発現し、細胞内局在性における変化はとくにみられないことを確認した。(2)トリプレットリピート多型性がeRF3/GSPT1による遺伝子発現制御におよぼす影響の検討eRF3/GSPT1のトリプレットリピートアイソフォームをβグロビンのレポーター遺伝子とともにHeLa細胞に遺伝子導入をおこない、細胞内での過剰発現がβグロビンの遺伝子発現に与える影響について検討した。その結果、どのアイソフォームにおいてもβグロビンの発現量に変動は観察されなかった。(3)トリプレットリピート多型性がストレスによるeRF3/GSPT1N末端領域の切断に及ぼす影響eRF3/GSPT1のトリプレットリピートアイソフォームをHeLa細胞に遺伝子導入し、アミノ酸飢餓ストレスを加えた際に観察されるN末端の切断活性について検討を行なった。その結果、正常なリピートをもつGly11に対して胃癌発症率が増大するGly12の場合においてN末端の切断効率が低下することが観察された。なお、本研究は新学術領域研究の採択に伴い廃止したため約8ヶ月間の研究期間で行なったものである。
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RNA 14
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