これまで我々は雌のATF-2遺伝子ヘテロ欠損マウスを1年以上飼育すると高頻度で乳がんを発症する事を見つけ、ATF-2が乳癌抑制因子として機能している事を明らかにした。DNAマイクロアレーを用いて発癌のメカニズムを解析した結果、ATF-2遺伝子欠損細胞ではGadd45αとMaspin遺伝子の発現低下が原因で低酸素刺激によるアポトーシスを誘導できない事を明らかにしてきた。 本研究では乳腺でがん抑制因子として働いている事が明らかに成ったATF-2は、本来乳腺上皮細胞でどの様な因子と複合体を形成しているのかを明らかにするために、ヒト上皮細胞由来のHeLa細胞にFlag-HAタグを付けたATF-2及びATF-7遺伝子産物を発現させて、それぞれの複合体を精製してMAS解析を行った。 MAS解析の結果ATF-2遺伝子産物は50種類以上の、ATF-7遺伝子産物は30種類以上のタンパク質とそれぞれ複合体を形成している事が明らかに成った。その中でATF-2はRb結合タンパク質やHDAC関連因子と複合体を形成しているのでこれらの役割と意義を解析している。また、ATF-7はヘテロクロマチン関連タンパク質多数と複合体を形成しているので、それらの生理的な意義を解析している。 次に、乳腺上皮細胞で野生型マウスとATF-2遺伝子ヘテロ欠損マウスで発現している遺伝子がどの程度異なるのかを解析する事が非常に重要であるので、現在マウスを長期間飼育して乳腺細胞を分離する準備を進めている。乳腺上皮細胞におけるATF-2のターゲット遺伝子を同定して、乳腺上皮細胞の増殖やアポトーシスとどのような関わりを持つのかを解明したい。
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