研究課題
【研究の目的】:これまでに低酸素反応性因子HIFに関して新規因子の同定と解析を行ってきた(JBC 2004)。この中で、HIF2に特異的に結合し、HIF1とは異なった蛋白安定性の機序を示す因子Int6/eIF3eを同定した(Chen et al JBC2007)。Int6はマウス乳ガン発症ウイルスがゲノムにIntegrationされる際の6番目の一であることから命名されており、マウスの乳ガン発症に不可欠との報告がなされていた。これまでの解析では、Int6はpVHLとは異なった機序でHIF2を特異的に分解し、さらに1淵IF2によるInt6のプロモーター制御をも介したNegative Feedback機序に重要な役割を演じていることが判明した。さらにInt6に特異的なsiRNAをマゥスの皮下に発現させたところ、非常に強力に、正常動脈・静脈を誘導した。本申請では、これらの結果を基に、癌化、特に乳ガンの癌化機序に関してKOマウス、およびヒト乳ガンサンプルを用いて解析を進める。【研究成果】これまでの詳細な解析により、Int6はHIF2を介した正常な動脈・静脈など血管新生のマスタースイッチの一つであることが明らかになった。さらに、Int6およびHIF2はそれぞれ低酸素に反応するプロモーター配列HREを持ち、HIF2自身のポジティブ制御に加え、Int6によるネガティブフィードバック制御により厳密に制御されていることが明確になった(Circulation, in press)。今回の研究では、conditional KOマウス作製のためのベクター構築が完了し、現在マウスへの導入を行い、ES細胞を選別している最中である。今後、表現形が出た場合には詳細に解析を進める予定である。また、siRNA-Int6を用いた予備的な動物モデルでの検討として、皮膚損傷モデル、下肢閉塞モデル、脳梗塞モデル、心筋梗塞モデルなど、siRNAの導入により著明な改善効果が認められた。これらの結果よりInt6/HIF2を介する情報伝達系は、血管新生の機序解明には不可欠なPathwayであることが明確になった。
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Circulation (In press)
Biochem.Brain Behav Immun
ページ: Epub ahead of print
Biochem.Brain Res.Comm.
Exp.Mol.Med. 41
ページ: 849-857
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