研究概要 |
・平成20年度までの研究で、我々はGISTの転移巣において悪性化に関与する遺伝子異常を調べるため、GISTの多発転移により死亡した病理解剖30症例145病変について解析を行っている。これらの症例はメシル酸イマチニブによる治療は行われていない。それにも関わらず一部の症例(4症例10病変)において、KITの陰性化がみられた。さらにこのKIT陰性病変について、他のチロシンキナーゼ型レセプター(TKR)発現(Her2, EGFR, MET, PDGFRA, PDGFIB)について免疫染色を行ったところ、6病変においてPDGFRBの発現が見られ、他のTKRの発現は観察されなかった。以上の結果から、GISTの転移再発巣においてはKITの発現低下に伴い、PDGFRBが腫瘍の増殖に関与している可能性が示唆された。現在、活性化のメカニズムを明らかにするため、以下の検索を行っている 1)PDGFRB遺伝子変異の検索(傍細包膜領域exon12、チロシンキナーゼドメインexon18) 2)PDGFRB遺伝子増幅の検索(FISH法により腫瘍細胞におけるPDGFB遺伝子増幅について検索を行う) ・GIST発生初期に関与する遺伝子の探索については、現在1p, 14q, 22qにターゲットを絞った超高密度マイクロアレイによりCGHのデータ解析を行っている。現在までに腫瘍径5-35mm大までの小GIST14症例、NF1合併GIST, GIST cell lineについての検索を終了しておりデータの解析中である。さらにプロモータ領域の異常メチル化についてマイクロアレイによる解析を引き続き症例を増やして行っており、GIST発生初期に関与する癌抑制遺伝子の候補を特定し、この遺伝子についてGIST細胞株(GIST882)への導入実験を行う予定である。
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