抗がん剤の体内動態に働くトランスポーターについて、ノックアウトマウスを用いた解析を行った。Mrp4は正常組織のほか血球細胞にも発現しており、局所のMrp4基質濃度を制御していることが報告されている。Mrp4(-/-)マウスにMTXおよび過去に報告のある6-mercaptopurineを投与し、有害作用の発現を野生型と比較した。6-mercaptopurineでは体重減少がノックアウトマウスで顕著であるのに対して、methotrexate投与による体重減少は野生型と同程度であった。Mrp3(-/-)において、抗がん剤の体内動態を検討した。irinotecanを投与した際に、血液中のiritenocan濃度は変わらないものの、SN-38濃度は顕著に減少した。SN-38を投与した場合には、SN-38の濃度には影響が見られなかった。In vitro試験では、肝臓内の加水分解活性、ならびにUGTによる抱合活性は、野生型マウスとMrp3(-/-)マウスと同定度であり、他の経路の発現変動は生じていないことを確認した。Sf9を用いたMrp3発現膜ベシクルにおいても、SN-38がMrp3基質となることを確認した。Mrp3の欠損による肝細胞内から血液中への排泄低下が、SN-38の血漿中濃度の低下によることが示唆された。同様に、抗がん剤raltitrexedについては、Mrp3(-/-)マウスでは血漿中からの消失が促進されており、Mrp3の欠損によりシヌソイド側の排出が低下したことにより、肝消失が促進されたものと考えている。 Methotrexateの吸収低下が観察された小腸では、SN-38のグルクロン酸抱合体の基底膜側への排泄は低下したものの、SN-38自身の分泌は野生型と同定度であり、肝臓とはトランスポーターの寄与率が異なることが示唆された。
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