研究概要 |
本研究は、日本人の肺癌、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌における「発がんのリスクに関わる遺伝子多型」を広汎に検索したものである。これまでに有意差をもって上記の癌の発癌リスクに関わるミスセンスSNPを45遺伝子で計50種発見した(総計のSNP-癌種相関108通り)。これらのms-SNPの多くは複数種の癌に関係し、多いものでは約8割の癌種に影響していた。上記108のうち92通りの相関は、本研究で初めて示されたものである。 特筆すべきことは、本研究では対照健常人(約450検体)、癌患者(約1,500検体)共にほぼ全てのSNPを解析し、それらの重複のデータを得たことである。上記のうち、99%信頼区間も有意であった26遺伝子の30 SNPが関係する60通りの相関について、癌種毎に関係する6〜12 SNPの個人別重複を数値化、層別化し解析した。その結果、我々は日本人の癌の約7割を占める肺癌、頭頸部癌、大腸癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌の各々について、約78%の低リスク群、20%の高リスク群、0.5-1.5%の超高リスク群を分別できた。また、乳癌と前立腺癌については、それぞれ55歳と70歳を境界とした2群の年齢集団で癌発症リスクに関わる遺伝子群が全く異なることを初めて発見した。この予測データを埼玉県のコホート集団に適用し, 14年間の追跡調査で癌発症が明らかとなった119名の遺伝子型を解析した結果、8種の癌についての予測的中率が, 平均約70%の感度、約80%の特異度であることが示された。今後この系を前向きコホート研究で実証できれば、癌の予防と早期発見に革新的進展が実現できると期待される。このため、地域の健康管理機関や病院と協力して中高齢健常人約1,500名規模の「がん早期発見トライアル」研究を平成20年度から開始し、既に約700検体が集積している。
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