研究概要 |
上部消化管癌の新たな診断・治療標的を同定し、癌の不均一性によってもたらされる治療抵抗性の機序の解明とその克服に資することを目的し、本年度は以下のとおり実施した。 1) SAGE法による食道癌の網羅的遺伝子発現解析と特異的遺伝子の同定 食道扁平上皮癌より常法によりRNAを抽出し、SAGE(serial analysis of gene expression)法を用いて、10000tag以上のシークエンスを施行した。SAGEmapデータベースの正常食道ライブラリーとの比較から、食道癌で発現が亢進している遺伝子として、ADAMTS 16, IGHG 1, DIP2C, PTPLB, OGFOD 1, SPARCなどを同定した。定量的RT-PCRによってADAMTS 16は食道癌の40%において過剰発現しており、SCCA 1の20%より明らかに高頻度であった。ADAMTS 16-siRNA処理により、食道癌細胞株の増殖能・浸潤能は有意に抑制された。 2) CAST法による胃癌特異的膜蛋白・分泌蛋白コード遺伝子の同定 膜蛋白あるいは分泌蛋白を効率良く同定する方法CAST(Escherichia coli ampicillinsecretion trap)法を用いて網羅的解析を行なった。MKN-28およびMKN-1と正常胃粘膜から調整したcDNAライブラリーをpCASTベクターに組み込み、アンピシリン耐性クローンをそれぞれ1200クローン以上解析した。胃癌のみに発現していた67遺伝子について、定量的RT-PCRより、正常全身諸臓器および癌組織における発現を解析した結果、DMKN, PCDHB 9, BST2, DSC2などが胃癌特異的発現遺伝子の候補として抽出された。これらについて、免疫染色による発現と局在、細胞生物学的な機能解析を行なっている。
|