金ナノ粒子を用いるプロテインキナーゼ活性評価システムを用いて、がん細胞の増殖活性に直結するプロテインキナーゼCα活性を検出するシステムを構築した。本システムは、実際にがん由来株化細胞での検討で、実際に細胞内の当該キナーゼ活性を評価できることを見出し、さらに、担がんマウスを用いる実験で、実際にがん組織中の活性も検出可能であった。また、実際にがん患者の摘出標本を用いて、がん細胞内で亢進しているプロテインキナーゼCαの活性を評価することにも成功した。11例の乳がん患者の摘出標本を用い、正常組織部分では、本キナーゼの活性は見られなかったのに対し、がん組織部位では顕著な活性が認められた。このことより、本法ががんの診断に適用できる可能性が示された。また、制癌剤投与後の摘出標本で、一部、活性が認められない組織が存在したが、これは、制癌剤の効果が見られたためかも知れず、今後、患者の予後を調査する事により、患者のがんにおける予後の判定や、治療に効果のある制癌剤の判定などに本システムが利用可能である可能性がある。また、種々のキナーゼの阻害剤の阻害能の検定を行ったところ、報告値とほぼ矛盾のないIC50値が得られ、本システムが阻害剤評価法として優れていることを実証した。また、本システムを用いたプロテインキナーゼ阻害剤ハイスループットスクリーニングを検討した。ケミカルライブラリを用い、プロテインキナーゼCに対する阻害能を評価したところ、ケミカルライブラリに含まれていた既知の阻害剤2種は、すべてヒットした。その他にも、新規な阻害能を有する物質がヒットした。
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