平成21年度は、まず、昨年から引き続き、金ナノ粒子を用いるキナーゼアッセイを実際の摘出したヒト乳がんを用いた診断の検討を行った。30例のヒト乳がんサンプルの提供を受け、本アッセイとウェスタンブロッティング法により、プロテインキナーゼCαの活性を評価した。その結果、本アッセイががんの悪性度の評価に基本的に適用可能であることを見出した。また、担がんマウスの血中に活性型プロテインキナーゼCαが存在することを発見し、癌診断マーカーとしての可能性を検討した。血中のPKCαの活性は、がんの増殖に依存して上昇し、がんの切除と再度の増殖に完全に一致して変化した。また、血中にPKC阻害剤を添加すると、活性が見られなくなることから、確かにPKCαであることを確認した。また、実際の診断を指向して、血漿ではなく、血清でも評価可能であるかを検討し、血清でも十分に適用可能であることを確認した。本手法は、数マイクロリットルの血清があれば評価可能であり、もしヒトに適用できれば、化学療法時の予後評価などに力を発揮すると考えられ、現在、実際に肺がん患者の血清サンプルの提供を受け、トランスレーショナルリサーチを展開している。また、さらなる感度の向上を目指して、近赤外領域に極めて大きな吸収を有する金ナノロッドを同様のアッセイ法に適用可能であるかを検討した。その結果、十分に適用可能であり、従来の金ナノ粒子を用いる手法に比べ感度の向上を実現した。
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