本研究の目的は、大腸がんの症例対照研究(症例840名、対照833名)において収集された調査資料とDNA試料を用いて、大腸発がんにおける食物栄養要因の役割を明らかにすることである。カルシウム摂取量が多い者で大腸がんリスクの減少が見られたが、このリスクの低下は体内ビタミンD量が多い者でのみ観察された。体内ビタミンD量はビタミンD摂取量と屋外活動量をもとに推定した。カルシウム摂取量だけでなく、体内ビタミンD量が大腸がん予防に重要であること示す知見である。ビタミンD受容体の4つの遺伝子多型の解析をおこなったが、いずれの多型も大腸がんリスクとの関連は見られなかった。自衛官研究の試料を用いて、大腸腺腫症例656名と対照648名について血中ビタミンD濃度を測定した。血中ビタミンD濃度は夏季に高値を示し、冬季は低値であった。血液採取時期が低ビタミンD季節の者でのみ、血中ビタミンD高値と関連した大腸腺腫リスクの低下が見られた。夏季血液採取の群ではむしろビタミンD高濃度で腺腫リスクの高まりが見られた。年間を通して屋外活動の少ない者では皮膚メラニン量が少なく、夏季にビタミンD濃度が高くなりやすいと推測される。大腸がん研究では、葉酸、メチオニン、ビタミンB2、B6及びB12の摂取量との関連も検討したが、メチオニンとの予防的関連が見られた。メチオニンと関連したリスク減少はチミジル酸合成酵素(TS)遺伝子プロモータ領域の28-bprepeat多型の3R/3Rでより顕著であった。3R/3Rでは遺伝子発現が高いことが報告されており、興味深い知見である。
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