研究概要 |
がん研究におけるプロテオミクス解析の最も有効なストラテジーを構築するため、最先端の高感度・分解能・解析速度をもつプロテオミクス解析技術のがん研究への応用と方法論の確立を行っている。昨年度に引き続き各種脳腫瘍の解析とそれらのProteome Data Baseの開発に加え、方法論を他の癌腫へ応用すると共に、プロトコールの最適化と迅速な検証法および定量化の検討を行った。特に、悪性glioma組織細胞、胆管がん細胞、褐色細胞腫、神経系腫瘍細胞等を用いて、各種蛍光/安定同位体標識差異解析法を中心に検討し、f〜atmolのレベルの組織由来蛋白質の同定と、定量的差異解析を可能とする技術(主にiTRAQ法、2D-DIGE法)の高感度定量化を検討し、約5000個の蛋白質の定量的同定に成功した。又、同じサンプルを用いてトランスクリプトーム解析を行い、mRNA発現解析データとプロテミクスのデータを統合マイニングする技術をソフト化し、様々なdifferential解析に応用することによってglioma発現蛋白質合計14000個の中から多数の新規分子群の同定を可能とした。Glioma, Cholangiocarcinoma, Pheochromocytomaの形成進行に関連して変化する蛋白質群の中から、gliomaに関しては抗癌剤耐性に関連するシグナル分子群(EGFR-MAPK, PI3K-AKT, 血管透過性、 細胞周期、細胞接着因子、核レセプター関連等)、胆管がんにおいては未分化型特異的分子群(MetAP2,Galectin3等)、Pheochromocytomaに於いては神経系分化に関わる分子群(CRMP2, 14-3-3, TCTP, PAIRBP1, ThyA1, NRAGE等)の抽出に成功した。又、これら同定分子群の抗体ライブラリーの作成と高感度auto2D-Western-Blottingによる迅速な検証法と細胞生物学的検証法、および再現性のある定量法を検討し、同定蛋白質群の経時的な発現変動の有意性を確認するとともに、本法論の有用性を証明した。
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