研究課題
リゾホスファチジン酸(LPA)は極めて簡単な構造の脂質性分子であるが、癌細胞の増殖、運動の重要な制御因子である。我々は15万種の化合物からLPA受容体アンタゴニスト(Ki16425)の開発に成功し、このLPAアンタゴニストが浸潤能の高い膵臓癌細胞、グリオーマの遊走、浸潤活性を著明に抑制することを見いだしている。我々はまた、受容体アンタゴニスト以外にもLPA1受容体を介した癌細胞の遊走、浸潤応答に対する抑制性シグナルを探索し、β-アドレナン受容体/cAMP系がLPA1受容体シグナルを著明に抑制することを見いだした。そこで、本研究ではLPA1受容体に対して抑制的に作用するKi16425が実際にインビボでも癌治療に有効であるかどうか、また、LPA1受容体に対するβ-アドレナン受容体/cAMP系の抑制機構の詳細を解析した。(1)膵臓癌細胞YAPC-PDをヌードマウス腹腔内に投与すると3~4週間後に腹膜播種が観察される。LPA1アンタゴニスト(Ki16425)を経口投与し、生存状態と腹膜播種、固形腫瘍形成の程度を測定したところ、Ki16425を投与すると生存が若干延びること、また、興味あることに肝臓への浸潤(あるいは転移)が明らかに抑制されることを観察した。(2)グリオーマにおいてβ-アドレナリン/cAMPはLPAによる遊走、浸潤を抑制する。そのメカニズムを解析した。PTEN欠損のグリオーマではβ-アドレナリンによつ抑制作用が観察されないことから、β-アドレナリン作用にはPTENの関与が示唆された。詳細な解析の結果、cAMP/Epac/Rap1を活性化し、PTENが活性化され、PI3キナーゼ依存性のRac1の活性低下、細胞遊走抑制を引き起こしていると推定された。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (11件) 図書 (1件) 備考 (1件)
J Biol Chem 285
ページ: 4387-4397
Endocrine, Metabolic and Immune Disorder-Drug Targets (In press)
Pharmacol Res (In press)
Endocrine J 56
ページ: 315-332
Vase Pharmacol 50
ページ: 178-184
Carcinogenesis 30
ページ: 457-465
J Immunol 182
ページ: 3243-3251
Acta Pharmacol Sin. 30
ページ: 1454-1461
Cell Immunol 259
ページ: 21-26
Mol Biol Cell 20
ページ: 5156-5165
http://imcr.showa.gunma-u.ac.jp/lab/signal/index.html