研究課題/領域番号 |
20015009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
唐子 堯 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00313213)
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研究分担者 |
國土 典宏 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00205361)
関水 和久 東京大学, 薬学系研究科, 教授 (90126095)
中田 宗宏 東海大学, 工学部, 教授 (00266371)
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キーワード | 肝細胞がん / DCP / 化学療法 / 肝内転移 / 脈管浸潤 |
研究概要 |
本研究計画では、肝細胞がん(以下、HCC)に対する新規化学療法剤開発を目的として、HCCに特徴的な分子であるDCPに着目した新しい概念の化合物の設計・合成を行い、HCC患者の予後に大きな影響を及ぼす脈管浸潤や肝内転移を抑制する化合物の創出を目指す。当該年度においては、まずDCPの発現性の変化がHCCの増殖に及ぼす影響に関して研究を行った。DCPの発現量は、DCPを発現するHCC細胞に対してビタミンKを作用させる事によって制御する事ができ、本研究においてもビタミンKを添加するとDCPの分泌量が減少する事を確認した。この結果に基づき、ビタミンK存在下でDCP発現量を減少させたHCC細胞を解析したところ、HCC細胞の増殖及び浸潤能が有意に抑制された。また、この効果は、HCCを移植したモデルヌードマウスにおいても認められた。従って、DCPの発現量の減少がHCCの進行を遅延させる効果をもつ事が示唆された。さらに、別の研究においては、過剰発現したDCPが血管内皮細胞の運動と血管形成を活性化し、HCC組織周囲に血管新生を誘導することがin vitro及びin vivoの実験系で確認された。以上より、DCPの阻害は、HCC細胞自体の増殖・浸潤の抑制及び血管内皮細胞の増殖と運動による血管形成の抑制という二つの側面からHCCに対する抗癌効果をもたらす事が示唆された。一方、平行して実施してきたDCPの発現制御を目指した新規化学療法剤の開発に関する研究では、化合物ライブラリからスクリーニングした一種の化合物が、DCPを高レベルで発現するHCC細胞に対して顕著な抗癌効果を示した。HCC細胞の種類によって効果が異なる原因やDCPの発現性及び機能に対する直接的な効果に関しては、今後さらなる研究を実施する必要がある。
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