癌を対象としたインターフェロン(IFN)遺伝子治療効果の増強を目的に、インターフェロンγ(IFN-γ)遺伝子発現の増強・持続化に取り組んだ。昨年度までの検討から、プラスミド中のCpGモチーフが遺伝子発現が短期間であることの一因である可能性が示された。そこで、投与したプラスミド中のCpGモチーフのメチル化について検討したところ、CpGモチーフの多いプラスミドを投与した際に遺伝子発現の急激な低下が観測される投与後数日の時点では、プラスミドのCpGモチーフはメチル化されないことが明らかとなった。また、予めメチル化処理を行ったプラスミドを投与した場合にも、レベルは低いものの遺伝子発現が認められたことから、メチル化修飾は遺伝子発現レベルには影響を及ぼすものの、遺伝子導入時の急速な発現低下の要因ではないことが強く示唆された。一方、担癌マウスやアレルギー疾患モデルマウスでの長期発現実験において、投与量を増大させた場合には、遺伝子導入直後に観察された高いIFNレベルに起因すると考えられる有害作用が認められた。そこで、この一過性ピークの原因を明らかにするために、プロモータ/エンハンサの組み合わせを種々変更したIFN発現プラスミドを構築し、マウスに遺伝子導入後の血清中濃度プロファイルを解析した。その結果、導入直後の一過性ピークにはCMVエンハンサの関与が指摘された。一方、ROSA26プロモータを含むプラスミドからの遺伝子発現は、エンハンサの有無や種類に関わらず一定となることが示され、副作用の軽減に繋がることが期待された。一方、遺伝子発現後のIFNタンパク質の体内動態制御による治療効果増強にも取り組み、アルブミンとの融合タンパク質を設計することで、IFN-γの速やかな血中消失を抑制可能であることも明らかとなった。以上本研究では、プラスミドベクター並びにIFNタンパク質を新たにデザインすることで、IFN遺伝子発現の増強・持続化に成功した。
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