研究概要 |
がんの免疫療法においては、エフェクター細胞を腫瘍組織に効率的に移行させることに加えて、制御性T細胞を腫瘍組織から排除することが重要であると考えられる。制御性T細胞は腫瘍血管から腫瘍内に移行すると考えられるが、多くの腫瘍血管ではE-セレクチンの発現が認められ、ヒト末梢血中の制御性T細胞の多くはE-セレクチン結合活性を有する。したがって、制御性T細胞は腫瘍血管に発現するE-セレクチンと特異的に相互作用する結果、選択的に腫瘍内に浸潤する可能性が示唆される。本研究では、制御性T細胞におけるE-セレクチンリガンドの発現とその分子レベルでの詳細について解析した。マウスの脾臓、リンパ節、末梢血中の制御性T細胞(CD4^+Foxp3^+)ではCD4^+Foxp3^-T細胞に比較してE-セレクチン結合活性を有する細胞の割合が高く、特に末梢血中の制御性T細胞ではE-セレクチン結合活性陽性細胞の割合および結合活性がともに著明に上昇していた。一方、α-1, 3-フコース転移酵素FucT-IVおよびFucT-VIIを欠損するマウスの制御性T細胞では、E-セレクチン結合活性が完全に消失した。また、私たちがこれまでにエフェクターT細胞上のE-セレクチンリガンドとして同定したPSGL-1およびCD43を欠損するマウスの制御性T細胞ではE-セレクチン結合活性が著明に低下した。したがって、制御性T細胞において、適切な糖鎖修飾を受けたPSGL-1およびCD43がE-セレクチンリガンドとして機能すると考えられた。
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