研究課題
HVJの融合蛋白Fの糖鎖が樹状細胞上の未知のレセプターと反応して、AktからIκBのリン酸化を起こしてNFκBを活性化し、IL-6の分泌を促すことがわかった。これにより腫瘍巣では、制御性T細胞の機能阻害が誘発され、その結果、Effector T cell機能の阻害が薄れ腫瘍に対するCTL活性が維持される。F蛋白を精製し、脂質とdetergent存在下で混合してBio-Beadsを用いてdetergentを除去するとFを含むvirosomeができる。マウス結腸癌CT26細胞を皮内移植した担癌マウスの腫瘍内にこのvirosomeを投与すると、不活性化したHVJ(HVJ-E)と同様の腫瘍抑制効果を得ることができたが、HN蛋白を持つvirosomeでは効果がなかった。一方、ヒトの前立腺がんや神経膠芽腫はHVJ-Eに感受性が高く、interferon-α, βを分泌して、それを感知しアポトーシスを誘導して死にいたることがわかった。この作用はHVJ-Eに残存するウイルスゲノム断片によっていた。したがって一般にはF-virosomeよりもHVJ-Eの方が高い抗腫瘍効果を期待できる。しかしHVJを全身投与すると、赤血球凝集を引き起こす。そこでこの凝集能を欠失させるためHN特異的なsiRNAを導入した細胞を作成し、その細胞でHVJを産生させるとHNをもたず赤血球凝集をおこさないHVJが得られた。このHVJ-Eはマウス新鮮血中で24時間は安定に存在した。腫瘍への標的導入のためにトランスフェリンを結合させて全身投与したが、腫瘍内には数%しか導入できず、肝臓への取り込みも同様にみられた。より特異性の高い標的分子が必要であり、現在その探索を行っている。もう1つのアプローチとして生体適合性のポリマーでHVJ-Eを修飾することを試み、分子量3100のカチオン化ゼラチン(CG)がもっともHVJ-Eの遺伝子導入効率を高めること、ベクターサイズを約300nmに保ちうることがわかった。またCGにPEG修飾したPEG-CGも用いてHVJ-Eと結合させた。これらCG-HVJ-E, PEG-CG-HVJ-Eは赤血球凝集能がHVJ-Eの約50%に低下していた。肝臓に多発性腫瘍結節をもつマウスを作り、その心腔内にこれらCG修飾HVJ-Eを注入すると、腫瘍結節に取り込まれることがわかった。
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International Journal of Cancer (In press)
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