研究概要 |
細胞膜透過性ペプチド(CPP)融合型RNA結合蛋白質(RBP)と、そのRBPの認識RNA配列につながったsiRNAを組み合わせて細胞内に導入する方法を開発した。研究代表者らはCPP-RBP型のRNAキャリアとしてTatU1Aを用いる方法を最初に開発したが、このキャリアでは細胞質への導入効率が低い。CPP-RBP/RNA複合体を細胞に混ぜるだけで効率よく細胞質へRNAを導入できる方法の開発を目指し、以下の検討を行った。 (1) Tat以外のCPPによるRNA導入の検討 Tat以外のCPPとU1Aの融合蛋白質をキャリアとした場合に、TatU1Aと比べて, RNAの細胞内導入効率が上昇するかどうかを調べた。高い導入能をもつと報告されているEB1やCTP512と呼ばれるペプチドをCPP部分として, EB1-U1AやCTP512-U1Aなどを作製し, それらのRNA導入能を調べたところ, TatU1A以上の導入能を持たないことが分かった. (2) エンドソーム破壊性ペプチドの効果の検討 TatU1A/RNA複合体がエンドソームに捕らえられて細胞質に出て行きにくい問題に直接対処するために、エンドソームを破壊するための改変型TatU1Aを作製した。次年度はこのキャリアによるRNAデリバリーを評価する予定である。 (3) 2本鎖RNA結合性蛋白質の効果の検討 TatU1A/RNA複合体において、Tat部分はカチオン性なのでRNAと静電的相互作用により弱いながらも結合することが分かっている。従って思わしくない相互作用により、Tatペプチドの細胞内侵入の働きが弱まり, アグリゲーションも起こってしまうことが考えられる。そこで、静電的相互作用によるアグリゲーションを抑えるために2本鎖RNA結合性蛋白質により、RNAの大部分をカバーすることを検討した。その結果, わずかながら細胞内へのRNA導入効率の上昇がみられた。
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