研究概要 |
インターフェロン制御因子-4(IRF-4)はIRFファミリーに属する転写因子であり、免疫担当細胞特異的に発現誘導され、細胞増殖に対して正の方向に働く癌遺伝子としての性格を有する。申請者らはISREの配列(ISRE-SAAB1)においてIRF-1は転写を活性化し、IRF-4はその活性を抑制することを見出した。そこでIRF-4阻害物質の探索をISRE-SAAB1の下流につないだレポーター活性の回復を指標として(財)微生物化学研究会微生物化学研究センターと連携して開始した。現在までに放線菌由来生理活性化物質でIRF-4を効果的に抑制する物質は見つかっていないが、申請者らはATLL細胞は、TARIL受容体のR1, R2が発現しているもののTRAILに対して抵抗性であることに注目しTRAILと放線菌由来生理活性化物質の併用でATLL細胞特異的に作用する物資のスクリーニングを開始した。使用した細胞株はATLL患者より樹立されたもので臨床検体に近い細胞である。現在までに7344検体をスクリーニングし、293検体を2次スクリーニングに、さらに120検体を3次スクリーニングにかけた結果、TRAILと相互作用してATLL細胞特異的に毒性を表すものとして5検体を見出した。それらについて、HPLC、溶剤抽出試験などで作用物質の精製を行い、4つの陽性分画を得て物質同定を進めている。更にATLL細胞の生存に重要なNF-kappaB阻害物質のスクリーニングも並行して行い、5800検体中1検体に強力な活性を見出しその同定を進めているところである。また同時にATLL細胞株特異的に作用する物質のスクリーニングも行ってきたが、対照として用いていたJurkat細胞特異的に作用するがATLL細胞株には作用しない2検体を見出しそれらの同定を進めているところである。本因子が同定できれば逆に何故ATLL細胞が耐性であるかについて解析できることから大きな展開が期待できる。
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