研究概要 |
本年度は、21年度までに明らかにしてきたホウ素ナノカプセルの生体内挙動および各臓器内ホウ素蓄積濃度の時間依存的な変化に関するデータを基に、22年度では、研究計画期間内に実験が行えなかった原子炉での中性子照射実験を中心に行った。本研究期間を含め過去3年間日本原子力研究機構の原子炉(JRR4)ならびに京都大学原子炉実験所の原子炉(KUR)が燃料などの運搬および燃料棒の不具合の問題からいずれも稼働してなかったが、22年6月より稼働したことから主に腫瘍移植マウスを用いたモデル動物への中性子照射実験を行った。その結果、非常に高い抗腫瘍効果が得られた。ホウ素ナノカプセルを100mg/kg,30mg/kgのホウ素濃度で投与したマウスだけでなく、15mg/kg投与したマウスでも、ほぼ100%の中性子照射マウスで、腫瘍の委縮が1週間後に見られ、照射2週間後には、腫瘍が完全に消失した。また、21年度に開発に成功したホウ素ナノカプセルに修飾できるよう長鎖炭素鎖を導入したプロトポルフィリンIX(PP9)を用いて、ホウ素ナノデバイス化に行い、腫瘍移植マウスを用いたモデル動物への半導体レーザーを用いた光線力学療法を行ったところ、非常に高い抗腫瘍効果が得られた。さらに、このプロトポルフィリン融合ホウ素ナノデバイスを用いて、中性子捕捉治療効果を検討したところ、非常に高い抗腫瘍効果が得られた。本研究成果は、光線力学療法(PDT)と中性子捕捉療法の複合治療を動物レベルで初めて成功したものであり、この複合療法の有用性を示した初めての研究例である。今後、実用化に向けた検討を進めたい。
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