1.当研究室は、estrogenがヒト乳がん細胞のP-gp発現が低下させることを見いだした。この機構の解明のために、cDNAマイクロアレイ解析により抽出した402遺伝子をもとに、siRNA導入によりP-gpの発現を低下させる遺伝子を検索した。その結果、CTDSP2(carboxy-terminal domain small phosphatase2)、DUSP1(dual specificity phosphatase1)、IMPA2(inositol(myo)-1(or4)-monophosphatase2)のsiRNA導入により、MCF-7/MDR細胞のP-gpの発現が大きく低下することを見いだした.これらの3遺伝子はいずれも脱リン酸化酵素をコードする遺伝子であった。2.当研究室は、MEK-ERK-RSK系の阻害により、ヒト大腸がん細胞のP-gpの発現が低下することを見いだした。新規MEK阻害薬は、数nMでSW620細胞のMEKを選択的に阻害し、またP-gpの発現を大きぐ低下させた。MEK阻害薬は、SW620細胞のMDR1 mRNA発現量を変化させなかった。このことから、MEK阻害薬は転写後の過程においてP-gpの発現を抑制していると推察された。3.マルチキナーゼ阻害薬であるsunitinibはK562/BCRP、K562/MDRのvesicleへのATP依存的なestrone sulfate、vincristineの取り込みを競合的に阻害した。sunitinibは、BCRPをより低濃度で阻害した。4.新規acrylonitrile化合物は、当研究室が同定したBCRPの5種のSNPについて、一様な阻害作用を示した。一方、sunitinibは、BCRPの膜貫通ドメインに変異を持つF431L-BCRPに対して阻害効果を示さなかった。sunitinibは、野生型BCRPへのiodoarylazidoprazosin(IAAP)の結合を顕著に減少させた。一方、BCRP-F431LへのIAAPの結合には影響しなかった。
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