研究概要 |
1, 高分子合成およびミセルへの薬物の封入 ・抗がん剤としてACNU, BCNU, temozolomide、カンプトテシンの封入を試みた。ポリマーとしてはポリエチレングリコール-b-ポリ(アスパラギン酸エステル)のベンジルエステル化率を変えたものを用いた。このうち封入ができたのは、ACNUとカンプトテシンであった。但し、カンプトテシンではミセルからの徐放効果が得られるのに対し、ACNUはカナリヤ早い放出がin vitroで観察された。 ・また、タイプの異なる薬物として合成レチノイドのAm80を封入することに成功し、比較的徐放な薬物挙動が得られた。来年度は抗がん活性評価をおこなう予定。 2, アドリアマイシン(ADR)封入ミセルを用いた解析 ・アドリアマイシンを封入した高分子ミセルは、0.6%アガロースゲルからなるファントム(脳組織での分布を観察するモデル)ディスカッションCED法による注入で良好な広がりを示した。 ・同ミセルはラット9L脳腫瘍もモデルでのがん組織での広がりを定量的に解析した。(複数のスライスの蛍光顕微鏡像をつなぎ合わせることによる)、CED法の注入により、単体のアドリアマイシンを注入したときに比べ、有意に広い腫瘍組織分布を示し、これはアドリアマイシンのリポソーム製剤(ドキシル)と同等であった。 ・同ミセルはラット9L脳腫瘍もモデルで、CED法の注入により、有意な生存延長をするのに対し、ドキシルは示さないことが前年の研究でわかっている。この結果と上記のがん組織分布の結果を比較すると、高分子ミセルの場合のみ抗がん活性が観察されたのは、がん組織にて薬物が有効な量放出されたことを示唆する。薬物の放出性においてCED法に適した性質と高分子ミセルキャリヤーが有することがわかった。 以上の結果より、高分子ミセルキャリヤーに抗がん剤を封入することでCED法に活用する、方法論が見いだされたと言える。
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