研究概要 |
本申請研究は、高分子ミセル薬物キャリヤーと脳腫瘍直接注入法であるCED法を組み合わせて、新規脳腫瘍化学療法システムを創成することを目的とする。本年度は、脳腫瘍に有効と考えられる種々の抗がん剤、抗がん活性物質を高分子ミセルキャリヤーに安定に封入する検討を行った。また、サルでMRIを測定する機会ができたので、抗がん剤システムと同じ高分子ミセルMRI造影剤でCED法による脳内分布に注力し、予定していたアドリアマイシン封入ミセルによる検討は行わなかった。 1, 高分子合成およびミセルへの薬物の封入 脳腫瘍に使用される抗がん剤BCNU,ACNU、temozolomideのミセルへの封入を試みた。どの薬物も高分子ミセルに1wt%以上の封入がみられなかった。これらの水溶性が高すぎるためと考えられる。一方、タイプの異なる薬物として合成レチノイドのAm80を10wt%程度封入することに成功したが、PBS中での放出が速く2時間で大部分が放出した。そこで、疎水性のアミンをイオンコンプレックス形成することで、顕著な徐放な薬物挙動が得られた。 2, CED法での脳内分布のサルでのMRI観察 サルの脳内にCED法によって、低分子のMRI造影剤(Gdキレート)と高分子ミセルMRI造影剤を投与し、投与直後と7日経過後のMRI画像を観察した。低分子造影剤では、直後は高分子ミセルの半分くらいの領域まで拡散しているのがみられたが、7日後には何も見えなかった。高分子ミセルMRI造影剤では投与直後もコントラストが高くかつ広範囲に広がっていることが観察され、7日後でもコントラスト果て生かしたものの、ほぼ同じ範囲にとどまっていることが観察された。このことより、高分子ミセル聖二あのCED投与によって、低分子製剤のように急速に血管に回収されることはなく、数日間の長期にわかって抗がん活性を発揮し得ることが明らかとなった。
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