研究概要 |
胃がん患者の生存率を大幅に改善するためには腹膜再発を予防することが最も重要である。腹膜再発予防のための新しい診断・治療戦略の構築をめざして今年度は以下の諸点を明らかにした。1)前年度に当センター消化器外科と共同で実施した腹腔洗浄液中CEA qRT-PCR法陽性症例(32例)に対する経口抗がん剤(TS-1)の治療効果に関する臨床第2相試験の結果、治療群は無治療群に比し有意な生存改善は認められず、TS-1単剤では腹膜再発阻止に不十分である可能性が示唆された。そこで腹膜転移に対するより強力な治療法として我々が前臨床試験により明らかにしていたパクリタキセル腹腔内化学療法を名古屋大学病態制御外科等と共同で臨床第2相試験として実施することを計画、その推進に協力し、今年度申請できる予定である。2)遺伝子診断法の診断精度の改善をめざして、Microarrayを用いた網羅的解析を行い、CEAを補完でき、これまでに報告のない新規遺伝子マーカーを5個同定した。さらに1000個程度の遺伝子を組み合わせて教師あり法(学習機会システム,SVM)により腹膜転移の有無を正確に予測できるアルゴリズムを確立(特許出願)し、前向き研究を開始した。3)新規治療法の開発では、これまでにマンノース被覆リポゾーム(OML)を用いて腹膜微小転移巣に特異的に薬剤を送達できるドラッグデリバリーシステム(DDS)を確立しているが、これまでのデータはマウスモデルに限られていた。本年度は健常人由来末梢血マクロファージならびに胃がん患者腹腔洗浄液由来のマクロファージを細胞性vehicleとしてOMLを患者由来の大網乳班(omental milky spots)に送達できることを明らかにし、臨床応用の可能性を示唆した。
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