研究課題
<研究の目的と進め方>我々はこれまでマイクロアレイを用いたDNAメチル化の網羅的解析法であるMIAMI法を用いて肺癌と正常肺との比較し、癌で脱メチル化されている配列の近傍においてtgctgggaという配列が有意に多く、しかもこの配列はmicroRNA(miRNA)のひとつであるmiR-610の3'側に末端の配列と一致していることをみいだした。ところで哺乳類でRNAinterference(RNAi)機構と転写の関係はあまりわかっていないが、最近、プロモーター配列に対する21merの2重鎖RNA(dsRNA)を導入することにより転写活性化がおこるdsrnA-inducedgene activation(RNAa)という現象が報告されている。そこで我々はmiR-610がin vivoにおけるRNAaに関与する転写制御miRNAではないかと考え、機能の検証をおこなう。さらにMIAMI法による解析の対象を癌以外にも広げてデータベース化し、同様のモチーフ解析、機能の検証を進め、見つかってきた転写制御miRNAの共通性を探る。<2008年度の成果>転写制御候補miRNAの機能解析転写制御候補のmiRNAであるmiR-6610を対応する8塩基のモチーフを転写調節領域にもつレポータープラスミド(あるいはモチーフに変異を導入したレポータープラスミド)と同時に細胞にトランスフェクションし、転写活性を検討した。8塩基のモチーフ含む転写調節領域としては肺癌で脱メチル化されている遺伝子であるASB18を用い293細胞にトランスフェクションした。その結果、予想に反しまったく転写の活性化はみられなかった。またレポーターのDNAメチル化に関してもCOBRA法で検討をおこなったが、まったくメチル化の変化はみられなかった。そこで今度は内在性の遺伝子に対する影響をマイクロアレイによる発現解析によりおこなった。そして発現の活性化のみられた遺伝子の上流に8塩基のモチーフが多いかどうかの検討をおこなった。その結果、8塩基のモチーフは発現上昇している遺伝子に若干多く見られたが統計的に有意というほどではなかった。MIAMI法によるDNAメチル化の変化する配列のデータ収集脂肪の分化のモデル系である3T3-L1細胞の分化誘導をはじめ、様々な系でMIAMI法を用いて網羅的DNAメチル化解析をおこなった。その結果、例えば3T3-L1細胞の分化においてはArhgef19遺伝子の脱メチル化が重要な役割をなしていることなどがわかった。また高脂肪食における肥満マウスモデルにおいても発現変化がみられ、生活習慣病におけるエピジェネティクに変化をする遺伝子として興味深く今後の展開が期待される。
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