研究概要 |
本来、ゼブラフィッシュは刺激応答時に尾をなめらかに左右に振る逃避運動をする。ENUを用いた変異体スクリーニングにより、引きつけを起こしたようにぎこちない運動をする変異体を4系統(劣性遺伝するものがmi262, mi264, mi371の3系統、優性遺伝するものがmi294の1系統)単離した。これら4系統について責任遺伝子を同定する目的でマッピング、クローニングを行い、mi262でナンセンス変異、mi264, mi294でミスセンス変異、mi371で1塩基欠失によるフレームシフト変異をcDNA上を確認した。劣性遺伝するmi262と優性遺伝するmi294の責任遺伝子は同一であった。これらの計3遺伝子全てにおいて、アンチセンスモルフォリノを用いたノックダウン実験を行い、引きつけを起こすような異常運動を再現することに成功した。mi264, mi371の2遺伝子についてはin vitroで合成したRNAを導入することで変異体を回復させるレスキュー実験にも成功し、該当遺伝子が変異体の責任遺伝子であることを必要十分に確認できた。mi262, mi294の遺伝子についてはまだレスキュー実験を行っていないが、責任遺伝子として確信している。先行しているmi262, mi294の2遺伝子についてin situ hybridization法で発現部位を確認し、それらが神経系と筋に広く発現する結果を得た。どちらも筋で発現が強いことから、筋の異常により、引きつけを起こすような異常運動が起こるものと考えている。これらの変異体が人の運動障害の動物モデルになるかはまだ断定できないが、同定した責任遺伝子3つのうち、mi262, mi294の責任遺伝子は筋力低下症の原因遺伝子であり、mi371の責任遺伝子は筋ジストロフィー病の原因遺伝子であることを考えると、これらの変異体から新しい疾患モデルを提唱できると期待できる。もう1つのmi264の責任遺伝子がヒトの疾患に関係するという報告はない。
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