研究概要 |
PTSはリン酸化とカップリングして糖を取り込むシステムであり, 有用物質生産性を向上させるために重要な役割を担っている. リン酸の供給源はPhosphoenolpyruvate(PEP)であり, PEPからグルコースまでPTSタンパク質(IIBC, IA, Hpr, EI)を介してリン酸が渡される. CRPとMlcはグローバル転写因子として, PTSタンパク質発現を制御する. グルコースPTSシステムのモデリングとシミュレーションを行った.従来は、PTSタンパク質のシグナルトランスダクションに関わるモデリングで, PTSタンパク質の遺伝子発現制御に関わるモデリング例は少ない. 実際, PTSの改変には, 遺伝子発現量の変化が重要な役割を担っているので, 遺伝子発現制御を含めたモデリングを行う必要があった. 代謝, タンパク質シグナルトランスダクション, 遺伝子発現制御を含む大規模微分方程式モデルを構築した. CADLIVEを用いてPTSシステムの数学モデルを作成し, 数値シミュレーションを行った. CADLIVEは生命分子ネットワーク構築, 数学モデリング, システム解析を支援するシステムである. 培地中のグルコース濃度の変化に対するPTSタンパク質の濃度変化を測定することによって, 動的シミュレーション結果と比較した. まず、数学モデルのロバストネスを検証した. 一般に生命システムは遺伝子発現量の変化に対して, システムは大きな変化を示さない, すなわちロバストネスを宗すことが知られている. そこで, 遺伝子発現量の変化に対するグルコース同化速度の感度を計算した. 次に、モデルの構築に用いなかった実験データを用いて, モデルの正当性を検証した. 具体的には, 培地中のグルコース濃度を低下させて細胞内のcAMP濃度変化, IIAのリン酸化状態を調べた.
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