当該年度は、メダカにおいてコンジェニック系統を高速に作成するための系の構築を進めた。頭蓋顔面は種内にも多様性が存在する量的形質であり、複雑な遺伝様式を示す。これまでに我々は、頭蓋顔面形質をメダカゲノムにマッピングし、形質の多様性形成に関わる領域を多数見出している。しかし、その領域内のどの遺伝子が形質に関わるのかを明らかにするためには、コンジェニック系統が必須である。通常の方法では系統樹立に3年程度かかるため、作成系の高速化を試みている。具体的には、メダカの精子凍結技術とマウスで提案されていたスピード・コンジェニック法を組み合わせた系を構築する。スピード・コンジェニック法では、ドナー系統由来のゲノム領域が少ない個体を選別・戻し交配することにより、5世代でコンジェニック系統を作出できる。当該年度においては、ドナー系統由来のゲノムの割合を調べるために使用する遺伝マーカーセット(10cMに1つ程度のマーカー間隔)を作成した。また、メダカ近交系であるHNIをHd-rRに戻した、戻し交配第一世代の雄100個体を作成し、精子凍結を行うと共に各個体からDNAを抽出するために個体のサンプリングを行った。これにより、任意のコンジェニック対象領域について、戻し交配第一世代雄100匹から最もドナー系統由来のゲノム量が少ない個体を選び、その凍結精子を用いて媒精することが可能となる。コンジェニック系統作成を戻し交配第二世代から開始できるため、1年程度で目的とする系統を得られる系である。
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