当該年度には1)メダカにおけるスピード・コンジェニック系統作成系の構築、および2)ゼブラフィッシュ頭蓋顔面形態の解析を進めた。1)の系では、戻し交配第一世代(BC_1)の雄からの精子を凍結する一方で、各個体のゲノムをモニタリングしておく。これにより、任意のコンジェニック対象領域についてBC_1雄から最もドナー系統由来のゲノム量が少ない個体を選び、その凍結精子を用いて媒精することが可能となる。コンジェニック系統作成を戻し交配第二世代から開始できるため、1年程度で目的とする系統を得られる系である。当該年度には精子凍結済みのBC_1雄のゲノムモニタリング(187個の遺伝マーカーによる遺伝子型決定)を実施した。個体番号と遺伝子型情報、凍結保存場所情報はきっちり関連付けした状態でそれぞれ保存されており、いずれのコンジェニック対象領域にも対応できる体制ができた。 頭蓋顔面形態の多様性形成についてゼブラフィッシュにて解析を行うためには、ゼブラフィッシュに遺伝性を示す頭蓋顔面形態の個体差が無くてはならない。そこで、2)としてゼブラフィッシュ成魚において系統間(クローズド・コロニーに相当)で頭蓋顔面形態に差異があるのかを検討した。3つの系統から十数個体ずつの比較を行なった結果、20-30%の形質で系統差が見出せた。このように少ないサンプル数でも差が見えるということから、解析に十分使用できそうである。ただし、さらにサンプル数を増やした確認解析が必要である。では、多様性が形成される時期は発生・成長過程のいつ頃なのだろうか。この疑問に答えるため、近交系化しつつある2系統の頭蓋顔面形態を、発生を追って、数匹ずつではあるが観察を行った。その結果、目視の状態でも受精後3日目から系統間に差がありそうなことがわかった。
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