研究概要 |
これまで、shh遺伝子発現のエピジェネティック制御が形態再生能力と相関することを示してきたが、shh遺伝子発現がないアフリカツメガエル四肢再生過程においてshhシグナルカスケードを強制的にONにすることにより、形態再生を不十分ながら起こせることを示した。この内容を論文にまとめた(Yakushiji et al., 2009)。さらにトランスジェニック技術を用いてより完全な形態再生を行わせるための実験系をshh-limb-enhancerを用いて作出した。Prx1エンハンサーについてはさまざまなdeletionコンストラクトを用いて解析を進め、再生特異的エンハンサー領域の候補を絞りだした。 形態再生不全のもう一つの要因がHoxA遺伝子群の発現調節異常にあることを見出し、その発現異常が細胞の性質や細胞分化に影響を与えることを示した。またその上流で働く遺伝子カスケードの候補としてRAシグナリングの解析を行い、そのつながりについて考察し論文として発表した(Ohgo et al., 2010)。 以上の結果を、本研究課題遂行内容全体から得られた新しい概念を含めた。脊椎動物全体について再生能力がゲノム構造にどのように刻まれていて、さらにどのように呼び出すか、また呼び出し能力の差(エピジェネティックな制御とジェネティックな制御)が再生能力の差にどのように結びつくかを考察できたことは、今後の器官再生研究への展開につながる大きな意義をもつ。これらの内容は総説としてまとめ発表した(Tamura et al., 2010)。
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