ゼブラフィッシュの重複RH2オプシンについてローカスコントロール領域の遺伝子に対する位置効果と各遺伝子の直上領域の特異性に関し研究を進め、発現制御機構の進化過程の一端を明らかにすることができた。ゼブラフィッシュの重複LWS遺伝子についてもそれらの制御領域の探索を進めた。メダカの重複SWS2遺伝子については、それらを含むBACクローンに蛍光レポーターを導入したDNAコンストラクトを作成し、発現制御領域の探索を開始した。この成果は重複遺伝子の発現分化研究に貢献し、中でも魚類の視物質オプシンにおいては初めての報告となり色覚進化研究に重要な貢献となる。また、メダカとゼブラフィッシュはともにゲノム研究が進んだ優れた実験モデル生物であり、その利点を生かした遺伝子制御領域の進化研究は優れたモデルケースになりえる。カーディナルテトラにおいてRH2オプシン遺伝子の喪失をM/LWSオプシン遺伝子の重複と分化が補っていたことは脊椎動物のオプシン遺伝子研究において重要な発見といえる。グッピーの集団内色覚多型を遺伝子レベルで解析可能にしたことは、色覚研究のみならず集団の遺伝的多様性研究の優れたモデルとなる。トゲウオの成果は回遊魚で初めて視物質オプシン全レパートリーを単離したことでもあり、生息環境の変化とオプシン遺伝子使用の関連の理解に大きく貢献できる。一部のM/LWSタイプオプシン遺伝子は従来の視物質再構成による波長測定の実験系では測定できなかった。細胞内輸送やフォールディングなどに種特異的な状況が生じているのかもしれない。
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