ゲノム解析 ゲノム概要配列の決定に向けて、ヨコヅナクマムシを大量に飼育・増殖させ、これを材料としてゲノムDNAを調製した。他生物の混入を避けるため、ゲノムDNAの調製直前に2日間の絶食と抗生物質処理を行った。最終的に2万匹超を投入して、ゲノム解読に足る品質のDNAを必要量得た。支援班の協力を得て、このうちの一部を用いてフォスミドライブラリを作成したほか、残りのDNAからショットガンライブラリを作成し、ホールゲノムショットガン解析を開始した。また、ゲノム調製と並行してクマムシの飼育方法の改良を進め、殺菌工程の追加による飼育系の大幅なクリーン化と省力化を行った。 完全長cDNA解析 乾眠状態のクマムシは無代謝でかつ有機溶媒耐性を持つ特殊な状態である。そこでまず、完全長cDNAライブラリの作成に向けて、小スケールのクマムシサンプルを用いてRNA ligase mediated RACEを行い、乾眠状態のクマムシでもオリゴキャップ法が機能することを確認した。先に行った小スケールのゲノムショットガン解析の配列データを基に、いくつかの動物種で乾燥時に発現上昇することが知られているLate Embryogenesis Abundant(LEA)遺伝子の完全長配列をRACE法により決定した。その結果、3つのLEA_4モチーフを持つ約26kDaの分泌タンパク質をコードしていることが分かった。動物界で細胞外分泌型のLEAが見つかったのは初めての例である。
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