研究概要 |
乾燥耐性・極限環境耐性を持つ動物クマムシについて、その耐性能力のゲノム基盤を明らかにするためにゲノム解読およびトランスクリプトーム解析を行った。まず、昨年度からひきつづきホールゲノムショットガン解析を進め、サンガー法を用いて計951Mbの配列を決定した(16xカバレッジ)。これと並行してフォスミドライブラリのエンドリード解析も行い、55Mbの配列を決定した。合わせて約IGbの配列をもとにPCAPでアセンブルを行った結果、スキャフォールドの総塩基長は58.8Mbとなり、予想ゲノムサイズの98%に相当した。高速シークエンサーを用いて約9Gbの追加解読を行い、現在ハイブリッド解析が進行中である。構築したスキャフォールドをもとに、SNAPを用いてab initio遺伝子予測を行った結果、約15,000個の遺伝子モデルを得た。遺伝子モデルの高精度化と乾燥時の発現変動を調べるために、高速シークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析(mRNA-seq)を行った。乾燥時/復帰時の4状態について、それぞれ約3Gbの配列を決定し、得られた配列を上記のゲノム配列にマップすることで、エクソン領域およびスプライスサイトを推定した。これらの情報をもとに遺伝子モデルの構築を進行中である。また、クマムシの転写産物はそれ自体が耐性能力に関わる遺伝子の資源としても有用と考えられる。そこで、mRNA-seq法に加えて、転写産物の機能解析や機能によるスクリーニングに供するために、乾眠状態のクマムシ約2万匹を材料として完全長cDNAライブラリを構築した。これまでに約4万クローンの末端配列を決定し、これらの情報を用いてアノテーションの検証と修正を行っている。
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