アポトーシス実行因子カスパーゼ8とカスパーゼ10、ならびに両因子に対し抑制作用を示すcFLIPについて、様々な生物から各遺伝子を単離しさらに遺伝子のゲノム構造について解析を進めた。本研究において、脊椎動物では軟骨魚・無顎魚類からカスパーゼ8ホモログを、また硬骨魚のメダカからcFLIP遺伝子を新たに単離した。硬骨魚でカスパーゼ10ホモログの存在が報告されていることを踏まえると、カスパーゼ8・カスパーゼ10・cFLIPの各遺伝子は硬骨魚において全て存在していたことを示唆し、ゲノム構造が酷似しているこれら遺伝子は硬骨魚に進化した時点あるいはそれより以前に祖先型のカスパーゼ8遺伝子から遺伝子重複により派生したと推察された。またカスパーゼ8の普遍的な機能を理解するために、無脊椎動物からカスパーゼ8ホモログ遺伝子を単離することも試み、背索動物・環形動物・軟体動物・刺胞動物からそれぞれからホモログ遺伝子を同定した。これら遺伝子に加え、我々が既に同定した脊椎動物や原索動物・棘皮動物由来のカスパーゼ8ホモログや、他の研究者によって単離されたカスパーゼ8ホモログを含めてアミノ酸配列を比較することにより、他のカスパーゼには認められずカスパーゼ8にのみ特異的に保存されたアミン酸残基が複数存在することを見出した。そのうち、プロテアーゼ領域の活性中心内のシステイン酸の隣にあるグルタミンは、ほとんどのカスパーゼ8において進化的に保存されていることが判明した。 またカスパーゼ8遺伝子変異メダカを作製してその表現型を解析し、さらには上記の生物種由来のカスパーゼ8をこの変異メダカに発現させてどのような表現型が現れるか調べることにより、カスパーゼ8の共通な生理役割を理解することを試みた。本研究により、カスパーゼ8遺伝子変異メダカの作出に成功し、F3世代まで系統化を進めるに至った。
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