真核生物の核ゲノムの遺伝子には、多数のイントロンが存在する。これらイントロンの起源と進化、そしてゲノム進化における新たな機能を明らかにするために、バイオインフォマティクスおよび実験による解析を行い、以下の成果を得た。 1.新規に獲得されたイントロンの同定:菌類の近縁種に着目したイントロンの獲得と消失のパターンを、最尤法を用いて推定し、フザリウムのゲノム中に新規に獲得された可能性のあるイントロン14個を発見した。これらのイントロンが内在する遺伝子とイントロンの存在を確認するために、フザリウムからゲノムDNAとトータルRNAを回収しPCR法で解析した。その結果、14カ所のうち10カ所については、タンパク質遺伝子が発現していること、および、イントロンが成熟mRNAから除去されていることを明らかにした。 2.非翻訳型RNA遺伝子のイントロンにコードされたsnoRNAクラスター:インフォマティクスで同定した非翻訳型RNA遺伝子(ホスト遺伝子)内にあるsnoRNA遺伝子の発現を、イネいもち病菌のゲノムDNAとトータルRNAを用いたPCR法により確認した。また、snoRNA遺伝子クラスターの進化の過程を推定するために、菌類21種、後生動物5種、植物2種およびマラリア原虫のゲノム配列を用いて、インフォマティクスによりオーソログのsnoRNA遺伝子の構成を予測した。その結果、菌類にはsnoRNA遺伝子クラスターが存在し、そのうち、イネいもち病菌を含む9種ではイントロン内在型、出芽酵母を含む10種ではポリシストロニック型であることが明らかになった。菌類以外の生物7種では、オーソログのsnoRNA遺伝子はゲノム上にクラスターを形成していないことから、snoRNA遺伝子クラスターは10億年前の菌類の祖先生物で出現したと推測した。
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