研究概要 |
2008年度行なった比較ゲノム解析により、ヒト、ラット、マウスにおいて保存されているGsdmaクラスター遺伝子群の発現調節と思われる配列を見出した。ヒトにおいては、その保存配列1kb以内に集中しているが、マウス、ラットにおいては、クラスター遺伝子間で違いはあるものの、概ね数キロベースの間に散在していた。これらの情報を基に、ヒト胃におけるGSDMAの発現に必要な調節領域は、エクソン1上流500ベースである事を培養細胞系により確認した。マウスにおいては、トランスジェニックマウスの解析から、少なくとも数キロベースが発現制御に必要である事が判明した。この結果は、データベースで得られた結果と一致していた。一方、Gsdmcクラスター遺伝子に関しては、我々の用いているGsdmcl cDNAの5'端が、NCBIマウスゲノムデータベースにおいて予想外にもマウスGsdmcl最終エクソンの遥か100kb下流に存在していた。マウスGsdmcクラスター遺伝子座は、2008年度ゲノム解析の成果により、予想以上に重複、欠損を繰り返していると考えられ、それが故、ゲノム情報の部分的エラーが存在すると考えられる、従って当該領域におけるゲノム情報の正確な把握は急務である。 Gsdm family遺伝子の機能解析として、Gsdmd遺伝子欠損マウスを作製し、その表現型解析を集中的に行なった。Gsdmd遺伝子欠損マウスは、胚発生期から成体に至まで致死となる事は無く、細胞組織学的にも正常な腸上皮が形成されていた。更に、細胞増殖、細胞分化、細胞死を免疫組織学的手法により解析した結果、これらの能力においてもコントロール群と比較して違いは見出されなかった。以上の結果から、Gsdmd遺伝子は、腸上皮の発生・分化、形態形成には関与しない事が明らかとなった。これらの成果を学術論文としてGenesis誌に発表した(Fujii, T. et.al., Genesis 2008 89, 418-423)。
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