研究概要 |
カンジダ(Candida)をはじめとする病原真菌の中には、重篤な日和見感染の原因菌が存在する。しかし、病原性には複数の因子が関与し病原性を呈していると考えられており、未解明な点が多い。治療の第一選択は抗真菌薬が処方されるが、既存の抗真菌薬においては選択毒性や耐性菌の問題が存在する。C. glabrataは、病原真菌の中で遺伝子操作が最も容易であり網羅的機能解析に最適であるので、我々はC. glabrataを病原真菌のモデル生物と位置づけゲノムワイドな遺伝子機能解析を進めることにより、病原性の普遍性を追求することを最終目標とし、Candida glabrataのフェノームプロジェクト(網羅的遺伝子機能解析)を推進している。本計画ではC. glabrataのゲノム(5,300遺伝子)の中で、必須遺伝子に対してテトラサイクリン転写抑制株(Tet株)を、非必須遺伝子に対してはノックアウト株を体系的に構築し、これらの組み換え株を用いて様々な条件下での培養やそれに伴う発現解析、マウスへの感染実験など通して表現型解析を進めた。 1) KU80ノックダウンシステムを用いたKO株(遺伝子欠損株)の作製を約1,000遺伝子について実施した。 2) マウス(ICR)に対して、定時的に免疫抑制剤とドキシサイクリンを効かせながら、C. glabtataのTet株30種類を混合した菌懸濁液を静脈に接種した。25頭のマウスを用いて、合計210本分のテンプレートサンプルを調整し、6,300回のPCRのデータを集計し、各遺伝子のin vivoでの必須性を検証した。抗真菌薬の標的候補を13遺伝子に絞ることができた。 3) 網羅的なcDNA5'解析 : 網羅的にRNAを回収するために、6種類の条件によりC. glabataの菌体を培養し、total RNAを調整した。IniTIA法(Hashimoto et al., Nat. Biotech., 2004)によって、cDNAの5'シークエンス25bpを調整し、イルミナ社Solexaを用いてシークエンスを決定した。その結果、IniTIA法において、RNAをBAP処理する際に脱リン酸化が不十分であり、不完全長でGeapが付与されていないRNAもcDNA化され、今回の解析データに含まれている可能性が示唆された。現在、その結果を考慮に入れながら、転写開始点の改訂、イントロン、未同定遺伝子の検出などのゲノムリアノテーションを進めている。
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