環境中に存在する磁性細菌1細胞から、バイオマグネタイト合成に関与するゲノム情報を獲得することを目的として研究を遂行している。本年度は環境中に存在する磁性細菌を含む細菌群から、磁性細菌のみを分離・回収し、そこからMDAによって増幅されたゲノム情報の評価を行った。 まず今回用いたサンプル中に存在する細菌の16SrDNA配列による分子系統解析を行ったところ、解析された90クローンから、58種と多様な細菌の存在が確認された。これらの中にはMagnetic coccus MP17など磁性細菌と考えられるクローンが複数種含まれた。そこでこのサンプルから、すでに申請者らによって開発されている磁性細菌の分離方法(Race track法)を用いて磁性細菌のみを分離した。そしてフローサイトメーターによって正確に100細胞に分種した後に、MDAによってゲノムを増幅した。これらについて同様に16SrDNA配列による分子系統解析を行ったところ、16クローン解析しすべてにおいて同一のMagnetic coccus MP17と完全相補な配列が得られた。このことからMDA産物は同一系統の菌種由来のゲノムから増幅されたことが示唆された。 本研究から多様な微生物が存在する環境中から同一系統の磁性細菌のみ分離し、ゲノム増幅が可能であることが示された。これによって、ここからバイオマグネタイト合成関連遺伝子群及びバイオマグネタイト形態制御遺伝子の抽出が可能であると考えられた。またこれまでに確立している1細胞の細菌からのMDAによるゲノム増幅を行うことで、1細胞の環境磁性細菌からのゲノム情報の獲得という本研究の目的が達成されるものと期待される。
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